小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=10
どの家も同じ大きさで、白い壁、素朴なせんべい瓦の屋根、眼窩のような二つの窓と入口が同じ方角を向いているのは幻想的な光景であった。
しかし、ぼろぼろの思いで入耕した移民たちは、そうした見慣れぬ風景に見惚れ、感嘆する前に、溜息を漏らしていた。
この耕地は州内屈指の大農場と評され、ここで産するコーヒーの多寡によって相場を変動させる力をもっているという。本耕地のほかに五つの分耕地があり、その面積や労働者の数を知る人は少ない。が、各国からの移民船が入港する度に数家族を受け入れていたから、おびただしい数の移民の出入りがあった筈だ。本耕地には労働者の生活必需品を賄う売店...
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