小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=11
「バカもの。飯に砂糖などかけて食べられるか。常識のないアマめが」
田倉は気に入らないことがあると直ぐに、《バカ野郎》を連発する癖があった。彼女たちは田倉に向かって両手を広げ、肩を持ち上げて解りません、といった表情で笑っている。
母のはぎは、脂気のないバサバサした髪の毛をかきあげながら、
「これでいいわ。砂糖水を作って稔に飲ませる。水だけ飲んでいても二、三〇日間ぐらいは生きられるそうだから」
と、生きることを諦めたような声を出した。
馬車に揺られて
すっかり夜になっていた。雲が垂れ込めていて星は見えない。味気ない夕食を済ませた二家族は、...
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