出遅れるグリーン水素事業=「世界最大の生産国」は夢⁈

再生可能エネルギーから作るグリーン水素(H2V、ポ語表記)は今後10年間でコモディティの一つになり得るが、ブラジルは国レベルの開発計画がなく、後れを取っていると25日付エスタード紙サイトなど(1)(2)(3)(4)が報じた。

水を電気分解して得る水素は製造過程で酸素を大気中に放出するため、環境に悪影響を与えないとされ、その用途も乗用車やトラック、船などの燃料、製造工場などでのエネルギー源、製鉄の還元剤など、多岐にわたる。
電気分解で得る水素は製造時に使うエネルギー源毎にグリーン、ブルー、グレーなどに分けられる。H2Vは風力や太陽光などの再生エネルギーを利用して水を電気分解するため、製造過程でも二酸化炭素(CO2)を出さない。現在活用中の水素は天然ガスなどの化石燃料を使い、CO2を空中に出すグレー水素が大半で、CO2を回収して地中深くに貯留するブルー水素がそれに続く。原子力発電で作る場合はイエロー水素と呼ばれる。
世界中が脱炭素社会に向かう中で注目されているH2Vは水素全体の数%だが、生産量は増えている。
アルヴァレス&マルサル・インフラによると、既に公表されたH2V関連のプロジェクト359件中、ブラジルで公表されたのはペルナンブコ州スアペの1件のみだという。
ブラジルでのH2Vへの取り組みは前政権から始まり、2021年に国家水素計画(PNH2)を公表。同計画ではテーマ別会議室が五つ設置されたが、実際には2022年8月にメンバー指名と作業開始が宣言されたのみ。鉱山動力省は第2段階では公開協議後の3年毎の作業計画公表と2023年の行動実施というが、詳細は未だに公開されていない。
同省によると、21年の電力調査公社(ENE)の報告には、セアラ州ペセン港をハブとし、ペルナンブコ州スアペ港とリオ州アス港を取り込んだ三つの工業レベルのH2Vプロジェクトがあるが、まだ、技術・経済的実現可能性の調査中だ。
再生エネルギーの占める比率が高いブラジルは世界でも有数のH2V生産国となり得る。23日付Veja誌(5)によると、5月には化石燃料からグリーン水素への置き換えプロセスを学び、エネルギー転換の実際を見るための調査団がドイツに派遣された。
4月26日付epbrサイト(6)は、国立クリーンエネルギー研究所によると、ブラジルではここ2年間で数十件のプロジェクトが公表され、300億ドル以上が投資される予定で、内10件は有望だと報じている。
2日付エスタード紙など(7)(8)によると、欧州ではブラジルのグリーン経済への投資に関心のある企業が列をなしているというが、ブラジルのバイオエコノミーの生産チェーンにはまだ、技術的な支援が不可欠で、国を挙げた取り組みが求められている。