小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=21
「お父ちゃんの四十二歳の厄払いやから、白ご飯にしたんやって」
横から浩二が言った。
「そうか、あいつ、弱っていても俺の歳覚えてたんやな。厄払いだから白ご飯か、日本ではお祝いは赤飯だったな」
田倉はしんみりとした声を出した。
「ブラジルは何も彼も反対やもんね」
律子が言い、親子三人は苦笑した。
「飯に水をかけて、塩鰯のおかずはよく合うな」
田倉はコーヒーの実の袋に背をもたせた。日本から持参した煙草《敷島》を煙管に詰め、点火した。一服、深く吸い込み、現実の労苦を忘れたかのような磊落な表情で、眼を閉じた。
食後の休憩時間を利用して、律子は八代房...
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