小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=24
「今頃、何をしてたんだ」
出会いざま田倉は大声を出した。見つけたことを内心喜びながらも、渋面を見せる田倉である。
「そんな大声出しなさんな。浩二君はお母さんが熱でうなされているから、困って家に相談にきたらしい。内の奴も家を空けられないし、わしらの帰りを待ってなはったとですばい」
八代はチョビ髭を動かしながら言った。
「いや、どうも、どうも」
田倉は、照れ隠しに頭をかいた。八代は誘われて田倉の家まできた。
「ご心配をおかけしてすみません」
出迎えた律子は慇懃に頭を下げた。
「アスピリンが効いたみたい。寝息が整ったわ」
炊事場の卓上には、いつ...
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