小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=25
縄煙草をくゆらせながら八代は言った。
「海興会社の宣伝文句みたいですな。が、わしにはお先真っ暗ですわ。どんな希望が持てますか」
「それは徐々に体得すっとですばい」
「ミソもクソも一緒くたにされる人間関係に、辟易してまんねが」
「そこが面白いとですたい。過去の肩書きなんか全部捨てて、一介の労働者として働く。中には肩書きにこだわる人もいるけど……そうだろう、巡査部長」
八代はろれつが怪しくなっている。
「部長ではありませんよ」
「軍隊では除隊すれば一階級昇級するでしょう。あれと同じで、ブラジルへ移住すると、みんな適当に格上げしよるたい」
二人はとり...
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