《記者コラム》ペルーでギランバレー症候群流行=4人が死亡し、非常事態宣言も

9日以降、ペルーでギランバレー症候群の患者が急増し、非常事態宣言も出たことに関連するニュースが続いている。
ギランバレー症候群は末端神経の障害のため、力が入らない、感覚が分かりにくい、しびれるといった症状を起こす病気で、10万人に1~2人程度の割で起こる。多くの場合は発症前に風邪の様な症状や下痢などの感染症症状(先行感染)が起こり、神経症状が始まったら、4週間以内に症状のピークを迎える。
神経症状には顔面麻痺や強い眠気、物が二重に見える、精神の混乱、癲癇のような発作、昏睡、震えなども含まれる。大抵はピーク後に回復が始まり、元の状態に戻っていくが、重度の血圧変動、不整脈、排尿障害といった自律神経障害や呼吸筋麻痺などが起きて死亡するケースもある。
原因はウイルスや細菌などによる感染症が引き金となって免疫機構が活発になり、自分自身の末梢神経を攻撃してしまうこととされており、死亡率は約1%。約20%の人は発症後1年経っても何らかの障害が残り、2~5%の人は再発するとされている。
ペルーの場合、今年に入ってから9日の非常事態宣言までに確認された患者数は182人。宣言時は31人が入院中で、死者も4人出ていたという。
保健省によると、ギランバレー症候群を引き起こし得る感染症は複数あり、下痢を引き起こすカンピロバクター感染症はその最たるものとされている。
だが、過去の研究では、ネッタイシマカが媒介するジカ熱やデング熱、チクングニア熱の他、麻疹(はしか)、インフルエンザ、マイコプラズマ肺炎、HIVなど、よく名前を聞く感染症による発症例もあるという。
ただし、ギランバレー症候群自体は人から人に移るものではないため、ペルーと国境を接する地域などでも患者との接触を避けるようにといった指示は出ていない。
コラム子がギランバレー症候群に関する記事に目が行ったのは、10年以上前に長女の学友が発症し、医療保険が使える病院に連れて行った長女から「診察を受けたが診断がつかない。仕事に行かなければならないが、本人の親はサントス市に住んでいて間に合わないから、代わりに付き添ってくれないか」と頼まれた経験があるからだ。
ちょうど休暇を取っていたため、病院に駆け付けて長女と交代し、診察や複数の検査、診断、入院まで付き添った時点で仕事を終えて駆け付けた長女と交代。翌日には本人の親達も来たため、娘と本人の母親が交替で介護。保険会社が承認したため、高価な薬を使うこともできたが、退院後も思うように体が動かず、車椅子生活となり休学した。
幸い、後遺症らしいものは残らず、復学し、大学も卒業したが、二十歳そこそこで立ち上がることも食事をすることもできない経験をした本人や家族の辛さはいかほどであったことか。
ペルーの患者の引き金の一つはデング熱と見られているようだが、ブラジルもデング熱蔓延が懸念される状態にあるし、インフルエンザや2価型新型コロナの予防接種率は目標からは程遠いとも聞く。対岸の火事と決め込まず、予防接種などの自衛手段は講じておく必要がありそうだ。(み)