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小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=29

2023年7月15日

 雨は大降りとなり、なかなか止みそうにない。その時、皆の頭上で何か引き裂かれるような轟音が発し、大きな物体が近くに落ちた。瞬間、四人は身体を縮めた。律子は無意識に隆夫に寄り添っていた。房江は荷物の上にうつ伏し、浩二は樹の下から飛び出し空を仰いだ。先ほどまで拡がっていた大フィゲイラの片枝が裂けて落ち、すぐ横のコーヒー樹に覆い被さっているのが見えた。
「強風と雨の重みでフィゲイラの枝が裂けてしまったんだよ。ひどいもんだ」
 浩二が驚きの声を上げたので、一同は樹の下から出てきた。眼の前で無惨に裂かれたフィゲイラと、押し潰されたコーヒー樹を見ながら、
「もう二、三メー...
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