site.title

小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=35

2023年8月2日

「そうよ、良くなったらお父ちゃんの好きなお酒も買ってくるわ」
 律子は声を詰まらせながら言った。その声に安心したように、田倉は眼を閉じた。酒と女に明け暮れた往時を夢に見ているのか。それを理解し、慰めてくれる律子の言葉に安堵したのか……
 二時間して眼を覚ました時は、正気に戻って、
「いや、身体がだるい。息切れがする。もう駄目だな」
 と言った。開けた眼を、すぐまた閉じて、
「俺は極道者だった。こんな所へお前たちを連れてきてしもうて、何もええことあらへん、困ったもんや。俺が死んだら日本の兄貴へ手紙を出すとええ。俺は何も頼める資格はあらへんけど、お前らが頼めば...

会員限定

有料会員限定コンテンツ

この記事の続きは有料会員限定コンテンツです。閲覧するには記事閲覧権限の取得が必要です。

認証情報を確認中...

有料記事閲覧について:
PDF会員は月に1記事まで、WEB/PDF会員はすべての有料記事を閲覧できます。

PDF会員の方へ:
すでにログインしている場合は、「今すぐ記事を読む」ボタンをクリックすると記事を閲覧できます。サーバー側で認証状態を確認できない場合でも、このボタンから直接アクセスできます。

Loading...