《記者コラム》学校にも行かず、仕事もしない=ネン・ネンの若者が多いブラジル

経済協力開発機構の調査によると、ブラジルでは18~24歳の若者の35・9%が学校にも行かず、仕事もしていないという。この数値は調査対象37カ国中、2番目に高い。29日付G1サイトなどが報じている。
ブラジルではこうした若者のことを、慣用表現「nem~、nem~(~でもなく、また~でもない)」から「ネン・ネン」または、「sem(~なしに)」から「セン・セン」と呼ぶ。
だが、ネン・ネンと呼ばれる若者たちがそう呼ばれるに至った理由は実に多様で、本人の意思でネン・ネンになったとは言えない例が多い。高校卒業後も仕事が見つからず、学費を払う力もないために大学や専門学校にも行けず、就職もしていない、若年妊娠で高校さえ終えずに子育てに追われているなどだ。
また、父母からも「夢を実現したかったら勉強しろ、努力しろ」と言われ、職業訓練講座なども受けたが、就職先が見つかず、「自分は無用な人間なのか」という思いに駆られて臍をかんでいる青年もいる。
ブラジルでは、貧困者が多い都市周辺部などではネン・ネンが多いが、裕福な人達が暮らす地域では少ないという。このことは新型コロナのパンデミックの際の失業者分布と相通じ、社会階層その他の若者を取り巻く環境がネン・ネンを生み出す要因の一つになっていることを窺わせる。ネン・ネンの比率がブラジルより高いのは南アフリカ共和国のみだったことも、各国の経済事情との関係を示唆しているといえよう。
現在のブラジルは失業率低下が続いているが、失業率は、働く意思を持ち、就職先を探している人しか数えないため、生活は苦しいが、子供が小さく、預けられる人や施設もなくて働けない人や、家族の中に介護が必要な人がおり、付きっ切りで面倒を見なければならないという人などは失業者の統計には出てこない。
職業訓練を兼ねた短時間勤務で給与ももらえる「ジョーヴェン・アプレンヂス」のようなプログラムも、育児施設や介護者派遣サービスがなくて利用できない人がいる。家が貧しくて教育を受けられず、安定した職に就けない人もいる。
ネン・ネンの状態を楽しんでいる若者以上に、苦しみ、もがいている若者がいることを思うと、職業訓練の場や雇用の創出、育児施設の充実、うつ病その他へのメンタルケアなど、側面からの支援の充実も不可欠だ。
働きながら夜学に通う人や複数の仕事を掛け持ちでこなす人もいる一方で、35・9%の若者が勉強も仕事もできずにいることも忘れずに見守りたい。(み)