小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=53
日頃、うす暗いカンテラの灯のもとで暮らしていた入植者には、このガス灯があるだけでいかにも洒落た教室に見え、ことに土曜日の夜は、明日は休日という気楽さもあって、植民地の青少年男女のほとんどが集まった。そこに席をおくことで自分が少し高級な学徒になったような心地さえした。
日本で高等小学校を卒業していた律子も、弟の浩二をつれて毎週でかけた。八代はそれほど学歴のある人物ではないと父親から聞かされていたが、先生の学識とは別に、一週に一度明るいガス灯のもとで、若者たちと席を一緒にできることは楽しい。八代先生が現れるまでの生徒同士の雑談も弾んだし、時に隆夫がくることもあって...
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