小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=79
日焼して色の黒い田倉は、酒のせいでさらに赤錆た顔になっていた。
「明日、日曜だから豚一頭やっちおうか」
と、浩二は無表情で言う。母親は、浩二も立派な青年に成長したと頼もしく思った。移住当時はおどおどして、牧場の中の牛が恐いとか、山鳩の声が淋しいなどと言いながらコーヒー園へ弁当を運んだものだった。半ズボンの少年が長ズボンとなり、見よう見真似で豚の去勢や屠殺も覚えた。最初はうまくいかず、父親に手伝ってもらったが、最近では近所の手伝いをするまでに上達した。この田舎では鶏や豚は、魚を料理するように各家庭で解体する。それができないと一人前の農民とは言えない。その他に、...
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