《記者コラム》産業革命前より1・48度上昇?=地球温暖化に歯止めかからず

9日、2023年は最も暑い年だったとのニュースが流れた。それによると、昨年の世界の平均気温は産業革命前の1850~1900年の水準を1・48度上回ったという。
この数値は、世界各国がパリ協定に従い、温室効果ガスの排出量削減を約束した際に設定した今世紀末まで守るべき「安全限界」の1・5度に近い。安全限界には2030年前には到達しないとされていた。
これは、温室効果ガスの排出が続き、パリ協定で想定していた状況を大きく書き換える事態が起きている証拠だ。地球温暖化加速は気候変動に関する国際会議や国連総会でも言われていたが、今回は具体的な数字で現実が示された。
地球温暖化は、海水温上昇に伴うエルニーニョ現象やサンゴの白化、永久凍土の融解、南極や北極の氷の融解、大西洋の海流の速度低下なども招いている。先日は世界最大規模の氷山分離という報道もあった。
これらの現象は取り返しのつかない環境大惨事が引き起こされる可能性がある警告現象リストに入っており、地球が以前の状態には戻れない「帰還不能点」に近付いていることも示している。
全世界73カ国、1万2千カ所以上でデータを集めた2020年の研究で、2009年より14%減ったとされていたサンゴは、エクアドル周辺水域中心に白化がさらに進んでおり、海水温の上昇継続を示している。
大西洋の海流の速度低下は、地球上の熱の90%を吸収するとされる海水が温まり、極部に近い海域と赤道付近の海域の海水温差が小さくなっている証拠だ。グリーンランドやラブラドルの海岸付近を通る北大西洋亜極循環流における大西洋海流システムが20世紀半ば以降、15%減速していることは複数の研究で確認されている。
2016年は1・29度、2020年は1・27度とされた気温上昇幅の拡大は、永久凍土融解による温室効果ガスの排出量増加や海水の熱吸収効果低下の証拠かもしれない。
温暖化はブラジルでも進んでおり、23年の平均気温24・92度は1991/2020年の平均気温を0・69度超え、観測史上最高だ。2022年の平均気温は0・16度増の24・07度だった。国立気象観測所によると、昨年は9月の1・6度増など、12カ月中9カ月で30年間の平均気温を超えていた。
23年の気温上昇は温暖化とエルニーニョ現象の影響とされ、気温上昇が目につくのはパラー州南部、マット・グロッソ州、マット・グロッソ・ド・スール州南部、パラナ州、リオ・グランデ・ド・スール州、ミナス州、ゴイアス州、バイア州、ペルナンブコ州、セアラー州だという。エルニーニョも温暖化で起きる現象だから、温室効果ガスの排出継続による悪循環は明白だ。
地球や人類を守るため、「安全限界」を超える日を1日でも遅らせる努力の必要性が増している。(み)