site.title

小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=100

2024年3月5日

 今年の全伯短歌大会に父は右の短歌を投じた。何故「吾のみの惨」か、そこに具体性がないので点稼ぎにはならなかったが、父がそう歌わずにはいられなかった心の逡巡が私にはよく解るような気がする。父は多くを語らない性格で、ことに母の病気がちな日々を他人にはおろか、親戚の者にも余り話さなかった。母を病身だと呼ぶのは母に対してばかりでなく、父自身も惨めになりがちだったから言葉に出さなかった。しかしその沈黙も限度にきた。親戚の者にだけでも知らせよう、と父は一番近くに住む母の姉に知らせた。伯母は泣きながら、次々と弟たちに母の病気を伝え、遠方の兄に電話した。翌日からひっきりなしに見舞い...

会員限定

有料会員限定コンテンツ

この記事の続きは有料会員限定コンテンツです。閲覧するには記事閲覧権限の取得が必要です。

認証情報を確認中...

有料記事閲覧について:
PDF会員は月に1記事まで、WEB/PDF会員はすべての有料記事を閲覧できます。

PDF会員の方へ:
すでにログインしている場合は、「今すぐ記事を読む」ボタンをクリックすると記事を閲覧できます。サーバー側で認証状態を確認できない場合でも、このボタンから直接アクセスできます。

Loading...