記者コラム=がんばれ! 継承日本語教育=聖南西教師研修会を取材して

1月24~25日、聖南西教育研究会(渡辺久洋会長)による聖南西教師研修会を取材した。研修会には聖南西地区の熱意ある日本語教師17人が参加。より良い日本語教育実現のため、それぞれの知見を交換しあったが、教師の努力だけでは解決し得ない課題も多くあり、参加者からは日系社会が築いてきた日本語教育の存続に対する危機感が感じられた。
コロニア・ピニャール日本語モデル校の西田みどりさんは、日本語教師になってから20年以上研修会に参加している。「研修会では多くの学びがあるので毎年実施されるのを楽しみにしています」と話す。
聖南西地区の日本語学校では生徒数の減少が年々深刻に。ピラール・ド・スール日本語学校の生徒数は約62人(3歳から14歳)だが、カッポン・ボニート日本語学校ではわずか2人だ。
日系社会に属する日本語学校の多くは、日本語や日本文化を日系の子どもたちに継承したいという移民によって作られた。いわゆる継承日本語教育だ。かつてはその子弟が多く通っていたが、ブラジル社会における日本語を使う機会やメリットの低下を背景にその数は減少。近年は、日本の教養が身に着くとの評判から非日系の生徒が増えるという変化も起きているという。
研修会初日に行われたグループディスカッションでは、「生徒(子ども・成人)を増やすために・続けてもらうために」をテーマに議論が行われた。議論の中心になったのは子ども生徒の増やし方で、教師たちが日本語、日本文化の継承を重視している様子が伺われた。
参加者は真剣に議論を交わし、多くの課題と対策を時間が許す限り話し合った。「卒業生に日本語学校に通うメリットを話してもらう」「達成感を目に見える形にすることで学習意欲を向上させる」などの意見が出たが、結論に達するには更なる議論が必要なようだった。
地方文協の日本語学校では、日本で日本の学校に通う以上に伝統的な日本を学ぶことが出来るように思える。それは日本語を学ぶと同時に日本文化の継承を行うようにしているからだ。
日本文化普及によってもたらされるブラジル社会への好影響は、現地からも認められている。日系社会では各地域で日本文化教育を伴った日本語教育を行うことが当たり前になっているが、これだけの規模と水準で行っている国は他にないだろう。
聖南西地区では、現地の日系人、非日系人、日本人らが日本語授業を行っているが、同地域ではJICAボランティアによる日本語教育支援も長く続けられている。
聖南西教育研究会の渡辺会長は元JICAボランティア。研修会には現在JICAボランティアとしてソロカバにあるUCENS日本文化センターに派遣されている野本美由紀さん、ピエダーデ日本語学校派遣の金城愛樹さんも参加した。

単なる言語技能習得以上の価値を生徒や地域にもたらす日系社会の日本語学校。今後は更にブラジル社会に溶け込んでいき、今まで培ってきた伝統的な教育方法に、未来へ向けた進歩的な教育方法を取り入れて行く事は必須となるだろう。教師たちは、失ってはいけないものは何かを見定め、それを継承していくためにどうすればいいかを懸命に模索している。彼らの努力が実を結ぶには、より多くの人々の理解と協力が不可欠であり、邦字紙記者として果たすことのできる役割は何かを改めて意識させられた。(島田莉奈記者)