小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=107
「浩二も知っている女だよ」
「子供の頃に外国移住した僕に知る筈がないじゃないか」
「彼女の幼少の頃を知っている筈だ。浩二は日本を出た時十歳だったろう、わしは十二歳で五年生だった。同級にこの女がいたんだ」
「……?」鼻筋が通って色白で唇のふっくらした女、矢野は考えてみたが思い出せない。
「あの小坂村の高田千江子だよ、学校に行く時お宮の森を横切って、すこしびっこの女の子がいただろう。よく浩二の手を取って、『浩二さん早くいこ。遅れるよ』と自分がビッこのくせに引っ張るようにして校門をくぐっていたじゃないか。いつも見ていたぜ。お前には親切だったよ」
「そう言われてみ...
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