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小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=110

2024年3月21日

 会場を一巡するのに五〇分位かかったろうか。屋外に出ると秋の日はかなり傾いていた。
 三人は近くの食堂に入った。ビールを注文し、懐石料理がでた。野菜を多くあしらった水っぽい料理で美味しいとは言えないが、この味が京都の名物の一つらしい、と矢野は自分に言い聞かせながら箸を運んだ。食事が済むと田島は画家連中との会合があるのでと言い、矢野に千江子を家まで送るようにと頼んだ。千江子とは何十年ぶりの邂逅だし、話すことは沢山あったので快く引き受けた。
 矢野と千江子は、京都駅から奈良線に乗り換えた。電車は混んでいて矢野たちは同じ吊り革につかまりながら立っていた。振動の激しい時...

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