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小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=116

2024年4月2日

「これ、どういう意味?」
 走り出すと、和子はフロント・ガラスの下に貼ってある写真を指した。
「お前とママの写真じゃないか。もう、六、七年前のかな。ママも元気だったし、お前も今よりは可愛かったかな」
「フン」と和子は、私の皮肉を鼻であしらい、
「写真のことじゃないのよ。ここに書いてある《パパイ横見しないで》って、どういうこと? ママを想い出すためなの」
「いや、おまじないさ。パパは時どき、車の事故をやるからな」
 二、三日前、ふと思いついて貼り付けたものである。亡妻への思いもあったから、私は内心では照れながら弁解がましく言った。娘はさほど意にも介さぬよう...

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