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小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=119

2024年4月9日

 水っぽく炊きあがった飯に、味付けの悪い牛肉、フェイジョン(煮豆)といったおかずを添えて、店の小僧、お手伝いとその子供、私の四人はほとんど無言で夕食を終えた。私は彼らの機嫌をとることをしないので、彼らは私を煙たがっているようだ。私の前では、お喋りも遠慮している。そんな雰囲気に私はいつの間にか慣れていた。
「ただいま!」
 和子が折りよく学校から戻った。
「遅いんだな」
 私は仏頂面をして言った。
「乗り物が混んでいて、なかなか乗れなかったのよ。それにバス停で秋野さんに掴まって話してたもんだから……」
「秋野さん?」
「そう秋野さんよ。あの人もう短歌作っ...

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