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小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=130

2024年4月24日

 数年過ぎて、田守は事務所勤めとなった。中学校を卒えていた彼はパトロン以上に事務仕事ができて、客扱いもすっかり板についていた。有能な事務員として俸給面でも厚遇されるようになったが、彼は自分の生活費以外は仲間との遊興費に使い果たしていた。欲がないというより自棄っぱちな所作があった。飲めない酒を無理に呷ったりしていた。
 もう十年近くも勤務した田守でもあり、ある責任を感じていた篠崎は、いつものバーでコーヒーを飲みながら、
「なあ、田守、君がよく働いてくれるので、わしの業務も軌道に乗り、ずっと順調で有難い。この辺で君も身を固めたらと考えるのだが」 
 と言った。最近...

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