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小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=131

2024年4月25日

 ある日のこと、
「私たち(彼女には養女が一人いた)、家の炊事に毎日あくせく働いているからメザーダ(月給)を貰いたい」
 と言い出した。田守は最初、冗談ぐらいに聞き流していたが、相手は真剣な顔で毎日くり返す。
「夫が生活費をだし、妻が家事を取りもつのが夫婦じゃないか。給料を支払うなんて不自然だ」
「妻の求めるだけくれるのが愛情というものよ」
 一緒に働いて二人で儲けよう、とくり返していた女がこの豹変ぶりである。田守も、この言葉には功利的になるにも程があると思う。
「お前は夫から、全部巻き上げて、無一文になったところで追い出すつもりか」
「私はね、お金、...

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