《記者コラム》実務面で存在感を主張=路線変更見せる保守派

このところニュースで民営化の話をよく耳にする。聖州でのサンパウロ水道局や、これから着手すると思われる聖市内地下鉄などだ。こうした話を聞く度に「保守派政治家たちが完全に次のフェーズに突入したのだな」と思わずにいられない。保守派政治家が民営化を推し進める背景には「ボルソナロ主義の行き詰まり」があることは間違いない。
ボルソナロ主義はこれまで、ネットを駆使して左派の欠点を徹底的に洗い出して叩く、あるいは左派が保護を訴える性や人種、社会的弱者への優遇を「多数派や福音派に対する逆差別」と煽ることで求心力を強めるやり方を用いてきた。
だが、昨年の1月8日襲撃事件をピークにその動きが弱まった。襲撃事件は国民に強いショックを与え、反感を招いた。ネット表現の規制も厳しくなり、そこにネット上のボルソナロ主義派リーダーだったボルソナロ前大統領次男カルロス氏の失速が重なった。
こうした壁にぶち当たったことに加え、現状のルーラ政権から目立った汚職の話題が浮上せず、経済面でもGDPが上がるなど決定的な攻撃材料がないことが政敵批判を鈍らせる要因になっているように映る。
ルーラ氏のガザ危機でのイスラエル批判なども問題にしたいのであろうが、伯国の保守派でもそこまでシオニストにはなれないのか、その批判で盛り上がることも少ない。
こうしたことから、最近のボルソナロ派政治家は、知事や連邦議員として、実務で結果を出そうとしているように見える。
22年の選挙では、大統領選でこそルーラ氏が勝ったが、議会選や地方選では保守が勝っていた。ある意味、この状況は彼らにとって腕の見せ所でもある。
加えて、ボルソナロ前大統領があまりにも政敵叩きに躍起になりすぎたことで、実務面で不満を抱えていた国民もかなりの数いたことは事実であり、その反省並びに軌道修正の意味合いがあるように感じる。
その結果、浮上してきているのがボルソナロ氏の最大の後継者と見られているタルシジオ・デ・フレイタス聖州知事による積極的な民営化政策や、あるいは「暴力的」との批判も恐れない、警察による厳しい犯罪取り締まり政策だ。
タルシジオ氏自身がもともと口数の多いタイプではなく、実務派であるため、らしいといえばらしくはある。
似たような傾向はミナス・ジェライス州のロメウ・ゼマ知事や、パラナ州のラチーニョ・ジュニオル知事などにも見られる。
民営化推進で保守派の存在感を示したいのはわかる。だが、パラナ州の学校のアウトソーシング化や、上院で審議中の海岸の民営化計画などは、少し行きすぎなような気もするが。(陽)