《記者コラム》「恋人の日」の記事に思う=年齢や性の差を超えた愛

12日が「恋人の日」であることに合わせ、G1サイトが2組の夫婦の紹介記事を掲載した。一組目は性転換した女性と普通の女性の夫婦。二組目は老人ホームに入ってからも毎日、互いを慕い合い、愛を確認している夫婦だ。
一組目の夫婦の話は12日付G1サイト(1)が報じたもので、以前なら公にすることもはばかられた、身体的な性と性自認不一致で違和感を感じる性同一性障害を持つ男性が、自分の内側にある違和感も含めたありのままの姿を受け入れてくれる女性と出会い、4年間の交際を経て、結婚したという。
二人の関係は20年以上続いており、結婚生活を通して、自分の中にあった違和感を公にする勇気を得た男性は、40歳を過ぎてから性転換して女性となった。また、10年以上待たされたが、養子縁組みも叶い、3人家族で幸福に暮らしているという。
多様な性を認める動きはまだまだ一般に浸透していない部分があるが、以前、同性愛者の脳の構造は女性であっても男性的な部分があるとか、男性であることを決めるY染色体の遺伝子は減少し続けており、将来は男性がいなくなる可能性もあるという記事を読んだことがある(22年12月25日付東京新聞(2)参照)。
脳の構造や染色体の遺伝子減少などという、人の手が加えられない部分が関係しているならば、ゲイだ、ホモだ、性転換者に両性愛者と騒ぎ、排斥することは、人の手が届かない所で起きていることを否定することになり、個々の人の人格や存在意義を否定することにもなるだろう。
二組目の老人ホームでもまだ互いの愛を確認し合っている夫婦の話は12日付G1サイト(3)が報じたもので、妻の認知症の症状が進み、夫一人では世話をしきれないと判断した孫が2人で老人ホームに入ることを勧めた。

最初は老人ホームに2人分の空きがなく、妻だけがホームに入ったが、夫は妻のことが気になり、落ち着いて生活できない状態が続いたという。
その後、夫もホームに入り、現在は、手を取り合っての散歩が日課に。母の日に計画された女性のための映画観賞会でも、夫が傍にいなくてはと妻が主張したため、特例扱いで席を連ねたという。
現在の妻と結婚するために前の妻と離婚し、子供も2人もうけた(うち1人は既に死亡)という夫は69歳、妻は77歳で、結婚生活は40年を超える。
このコラムを書いている時点で目にしたのはこの2組の話だけだが、愛情には年齢や性の差はないこと、お互いを愛する思いや信頼が二人の結びつきを強くし、偏見その他の壁も乗り越えさせること、一人一人の人格や価値を認めることの必要性などを強く思わされた。
互いの愛情は恋人の日や結婚記念日にだけ思い出すものではなく、日々、紡ぎ合い、育てていくものであることも覚えたい。(み)
(2)https://www.tokyo-np.co.jp/article/221970#:~:text=Y染色体は、遺伝子の,見られるといいます。 22年12月25日
(3)https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00139/ 21年8月23日