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小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=157

2024年6月19日

 多助は酒盃を重ねながら、信二に解ろうが解るまいが構わぬという乱暴な関西弁で話し続けた。 彼らは奈良盆地に住んでいた。
「富蔵はんは偉い人やで。この村から兵隊に征って軍曹になったのは先生だけや。それに村人は村に尽くさないと白い眼で見るもんやから、こんな了見の狭い村にいたら人間が駄目になるいうて巡査になられた。そして部長にまで昇られたんや。議員立候補は、後押しに持ち上げられて出馬したものの結果は惨敗やった。おっ母さんは機嫌悪いみたいやけど、負けるも勝つも男の世界や、と高倉はんのことは一口も言わん。わしの恩給ぐらいでは一家六人の生活は苦しい。一つ志を新たにしてブラジル...
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