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小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=161・終

2024年6月27日

 何のために整地され、土饅頭があって草花が植えてあるのか。子供たちは知らなかったし、大人たちは黙殺していた。
―─俺はここまでやってきたよ。
 朦朧とした意識の中で信二は呟いた。良子がいなくなってから、信二はこの花園を見つけ、しばしば独りで訪れていた。ここに居ることが信二の心の慰めとなっていた。
―─俺は知ってるんだ。良子ちゃんがこの花園の下にいることを。それはあのどしゃ降りの夜だったよ。町に出るには道路は破損し、車は不通で、バス便さえなかった。その翌日、良子ちゃんは亡くなったんだ。良子ちゃんは、今、ここに眠っているんだよな……
 信二は虚ろな眼を向けた。し...

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