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カンヌ入賞作=『ブリチーの花』公開開始=先住民コミュニティの歴史描写

2024年7月5日

『ブリチーの花』の一場面(©A Flor do Buriti/Divulgacao)
『ブリチーの花』の一場面(©A Flor do Buriti/Divulgacao)

 都会の灯りから離れた場所でしか見えない星をちりばめた夜空の奥に先住民族が奏でるマラカスの音が流れ、楽器のリズムに合わせてクラホ語で花の色を歌う歌が聞こえてくる。
 これは、フランスのカンヌ国際映画祭で入賞し、4日にブラジルでも公開される『ブリチーの花(A Flor do Buriti)』の出だしの部分だ。
 マラカス奏者はフランシスコ・イジュノ・クラホ氏。人類学者ヴィベイロス・デ・カストロ氏は、「イジュノがマラカスを振ると、それは粒子加速器になる」という言葉で先住民社会におけるシャーマニズムの役割を表現した。共同監督のレネー・ナデル・メソラ氏は、「これによってより多くの可能性が開かれると思う」と語っている。
 イジュノのマラカスは、第7芸術に特化した最も重要な映画祭の一つのシネマ・クロード・ドビュッシーでも流れた。同祭ではトカンチンス州北部のクラホ族コミュニティの先住民俳優で構成されたキャストが賞を受けた。
 クラホ族のコミュニティは約4千人の小さな群れだが、カンヌの映画祭でもドビュッシーの映画祭同様、先住民コミュニティの俳優達が自分達の言語で演じる姿が報じられた。
 この作品は、ジョアン・サラヴィザ監督とレネー監督がクラホ地域で開発したトレーニングワークにより、15カ月間かけて撮影された。
 オーディオビジュアルをツールとするトレーニングワークは好評で、レネー氏は「コミュニティは好奇心旺盛で、映画や写真、編集を学びたがった」と回顧。トレーニングワークは、2018年公開の長編映画『雨は死者の部落の歌(Chuva é Cantoria na Aldeia dos Mortos』の制作にも繋がった。
 『ブリチーの花』では、先住民族がコミュニティにとって重要な二つの歴史的瞬間を演じている。それは、1940年に起きた虐殺と、1969年に当時、権力を握っていた軍事独裁政権によって結成された先住民民兵組織への若者の徴兵だ。これらの出来事は政治の場を求め、侵略者や農民、野生生物の密売者から土地を開放するために戦っているクラホ族の現状を裏付ける。
 作品誕生のきっかけは、虐殺の物語を伝えなければという願望だった。2015~16年の『雨は歌』の撮影過程でのコミュニティの日々の戦いが、この作品に影響を与えたとレネー氏は言う。
 『ブリチーの花』のもう一人の主人公であるイジュノは、先住民居住地の境にある土地の盗難プロセスに深く関与し、国立先住民族保護財団(Funai)に告訴。証拠として航空写真を使うためにドローンを入手したことなども、映画の中で描かれている。
 脚本チームには先住民族も参加しており、彼らの世界観と歴史の伝え方が融合された。「この映画は歴史を伝える別の方法を開拓しようとするもの。主人公は複数で、時間性が混ざり合う場所を伝えるための新しい方法を創り出そうとしている。先住民コミュニティと話し、時間を費やし、時を重ねるほど、この形式が我々の映画制作の方法の一部になっていく」と監督はいう。
 先住民の物語は慣れていない人には複雑に見えるかもしれないが、複数の視点を受け入れる可能性が更に広がる。「神話は人間の視点から語られることも、動物の視点から語られることもある。訓練を受けていない人はいくら耳を傾けても多様性の中で迷ってしまうが、この作品ではその感覚を少しだけ取り入れたいと思った」とレネー氏は語っている(4日付アジェンシア・ブラジル(1)参照)。


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