site.title

小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=6

2024年7月16日

 自分たちの身分に対する彼等の幻影は日ならずして消えた。彼等は州農務局へ威儀を正して出頭し、皇国殖民会社社長水野竜が書いた農務長官あての紹介状をうやうやしく差し出したのだが、土地課長がそれを一瞥して、きわめて事務的に移民収容所長あての添書をくれたにすぎなかった。
 どうも誇大宣伝にひっかかってブラジルに来てしまったらしい、と気付きはしたが、若い五人にとってはそんな不満よりさしあたっては異国の風物の珍らしさの方が強かった。

 サンパウロに着いた翌日に早々と娼婦街に出かけた。
 嶺はリベロ・バダロ通りのロシヤ女のいる家へ入る姿を鈴木に見られている。
 平野は日記...

会員限定

有料会員限定コンテンツ

この記事の続きは有料会員限定コンテンツです。閲覧するには記事閲覧権限の取得が必要です。

認証情報を確認中...

有料記事閲覧について:
PDF会員は月に1記事まで、WEB/PDF会員はすべての有料記事を閲覧できます。

PDF会員の方へ:
すでにログインしている場合は、「今すぐ記事を読む」ボタンをクリックすると記事を閲覧できます。サーバー側で認証状態を確認できない場合でも、このボタンから直接アクセスできます。

Loading...