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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=8

2024年7月19日

 汽車の中で出たサラミのサンドイッチが喉に通らなかったので、油粥のようだと思いながらもお替りをする人もいた。
 万事に勝手がちがっていた。水洗便所を知らないので水が出た!と叫んで飛び出したり、その叫びを聞いて黒人の掃除人が駆けつけてくると、今度は黒人を怖いと叫んで逃げだしたり……面喰うことばかりだったが、初めての日本人を迎えた収容所の待遇もよく、コーヒーの木に金が成っている国にやっと着いた、というので誰もが陽気に浮かれていた。
 中でも景気のいいのは家長たちだった。十年たったら大金持になって日本へ帰るという男もいれば、十年などかかるものか五年だ、いや三年だ、と賑...

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