ベネズエラ=マドゥーロ再選で何が起きる=三つの可能性をメディアが予測

南米ベネズエラの国家選挙委員会(CNE)は29日未明に大統領選の結果を発表し、ニコラス・マドゥーロ大統領が51・20%を得ており、3期目の当選が確定と報告した。大統領側近とされるCNEのエルビス・アモロソ委員長は、開票率は8割を超えており、対抗馬のエドムンド・ゴンサレス・ウルティア氏の得票率44・2%を考えると、マドゥーロ氏当選は不可逆的だと述べた。
世論調査の結果を覆してマドゥーロ氏が再選を果たしたことで、近代ベネズエラ史で最も長く大統領の座にある人物となる可能性がある。マドゥーロ氏が次期大統領として正式に宣言された式典で、彼は反対派や「極右」勢力が国を不安定化させようとしていると非難し、2019年のフアン・グアイド国民議会議長が自らを暫定大統領として宣言した事例を引き合いに出し、新たな形で同様の手法が再度試みられることに対する警戒心を表明した。
一方、自身の立候補を阻まれたため、ゴンサレス氏の擁立と支援に回った反対派のリーダーのマリア・コリーナ・マチャド氏は29日、自分達が入手した70%余りの票のデータを解析した結果、ゴンサレス氏は627万票、マドゥーロ氏は275万票を獲得したと主張し、マドゥーロ反対派に対し、平和的な抗議を呼びかけた。
同日はBBCブラジル(1)が、マドゥーロ氏の勝利後にベネズエラで起こりうる三つのシナリオについて報じた。
一つ目の懸念材料は抗議の拡大だ。首都カラカスでは当選発表直後から鍋やフライパンを叩く音が響き、「不正だ!」と抗議する声が住民から上がった。多くの反対派はCNEの発表は正当ではないと訴え、各地で抗議デモが発生。治安部隊は催涙ガスやゴム弾を使って対応したが、29日だけで7人が死亡。逮捕者も多数出ている。
多くの政治アナリストは同国内ではさらなる抗議行動が起こると見ており、政治学者のエドゥアルド・ヴァレロ氏は国民の不満と当局による弾圧を引き起こすと予想している。
ヴァレロ氏は「問題は政府がさらなる弾圧のコストを負う覚悟があるかだ。結果を尊重しない人々を逮捕する費用も政府が負うだろうか」と問いかけたが、抗議デモの発生やその強さは、再選発表に対する反対派の反応の強さと、人々に一斉に街頭に出るよう求めるか否かで決まると考えている。
二つ目は、国際的な非承認とさらなる制裁の可能性だ。多くの国のリーダーたちはマドゥーロ氏に選挙結果を尊重するよう求めているが、これには不正操作の可能性を懸念する声が含まれている。
ルーラ大統領は選挙結果が発表されて以来、コメントを避けているが、先週の記者会見で「(マドゥーロ氏が)勝てばそのまま、負ければ辞めるべきだ」と述べた。
チリのガブリエル・ボリッチ大統領はCNEの発表後にその信頼性に疑問を呈し、全ての投票用紙とプロセスの透明性を求め、政府に関与していない国際的なオブザーバーが結果の信憑性について説明責任を負うべきだと明言した。
ヴァレロ氏は、持続的な成長は国際的な承認に依存すると指摘。ラテンアメリカの指導者がマドゥーロ氏に対抗する中、ルーラ大統領やコロンビアのペトロ大統領が仲介者としての役割を果たす可能性があると考えている。
他方、米国政府高官は対ベネズエラ制裁の方針は選挙の展開次第であることを示し、選挙がクリーンであれば制裁を緩和する可能性があると強調した。アントニー・ブリンケン米国務長官は、「発表された結果はベネズエラ国民の意思や投票を反映していない」と深刻な懸念を表明し、「国際社会はこれを注視しており、それに応じて対応する」と述べた。
三つ目の懸念事項は移民の増加だ。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、770万人のベネズエラ人が経済危機から逃れるために国外流出したが、ここ数カ月間は移民の数が減少し、一部の人々は帰国しているという。しかし、CNEの発表がこの移民の波を再び激化させることが懸念されている。世論調査会社メガナリシスが4月に行った調査では、マドゥーロ氏が再選されたら移住を考えると回答したベネズエラ人は44・6%いた。ORCコンサルタントが最近行った別の調査では、再選なら年内に移住計画を立てると答えた人が18%以上いた。
ただし、ヴァレロ氏は、現在の世界は10年前より不安定で、複数の国は戦争状態にあることから、移住は容易ではないという意識が高まっており、移民流出はさほど大きくならないと見ている。