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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=18

2024年8月8日

 声をかけたのは牧之段愛熊という、二十一才の若者だった。彼の向う側に十九才の妻のツタと、妻の弟の十四になる次太郎が坐っていた。三人だけの小さな家族だった。
 運平は腰の包みを拡げた。泊っている監督の細君がつくってくれたサンドイッチだった。
「どうだ、食わんか」
 彼はパンを出した。
「ええ」
 愛熊は一つとった。
「あんたもどうだ」
 ツタにすすめると、幼ない面影を残したツタは、
「パンはうまいが、ビンツケ油みたいの付けてるのが好かん」
 と首を振った゚
「ああ、これはバターといって、牛乳からとった栄養のあるものだ。早くこういうものに馴れんといか...

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