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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=21

2024年8月17日

 が、彼は割に平静だった。彼は儲ける心算でブラジルに来たのではなかったし、鈴木貞次郎にコーヒー園の仕組みも一応聞かされていた。だから笠戸丸移民たちが置かれた状況を、客観的に見ることができた。二、三年頑張って辛棒してみなければ結論はくだせない、というのが運平の判断だった。
 彼等は違約金を払っても、すぐこんな処を出て良い仕事を探した方がいいと騒いでいる。しかし、運平がサンパウロ移民収容所で見た自由移民たちの契約システムは州政府が農場側を監視する公平なものだった。だから日本移民が入った処だけが特に酷い処だとは思えない。
 このグアタパラにも二千人ものコロノ(農園労働...

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