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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=22

2024年8月20日

 スペイン娘と熱烈な恋を語るという夢はまだ色濃く若者の心に宿ってはいたが、たとえ外国語を喋って暮しても人間の〝日常〟そのものには変りないという事実は認識せざるを得なかった。
 彼は長いあいだ笑っていた。
 いやな認識ではなかった。外見こそ違え、人間は同じなのだという心良い認識だった。

 ……彼は笑いやんだ。じっと、遠くの地平線を眺めた。
 緑が波打って遥かに空にとけ込んでいた。赤いスカーフの娘が向うに居て、緑の中にその赤い点が目に鮮やかだった。こんな風景は日本にはない。風景がちがうように人の生活も、更に突っ込めば、やはり国に
よって違う筈だった。
 その...

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