パルナイバ川デルタ=世界最小のアリクイ種=保護活動進み確認数増加

ブラジル北東部パルナイバ川河口にあり、マラニョン州とピアウイ州、セアラ州にまたがるパルナイバ川デルタは砂丘やマングローブ、小島が多く、独特の動植物が生息。観光客にとっては楽園といえる場所の一つで、近年の研究と保護活動により、世界最小のアリクイ、タマンドゥアイ(学名Cyclopes didactylus)の確認数が30を超えたと21日付アジェンシア・ブラジル(1)が報じた。
同地域の生物多様性保護のため、森林再生や地域の保全、コミュニティベースの観光などに関する完全な野外実験室を備えた研究基地が設立されたのは4年前だ。以来、地道な研究と保全活動で小型アリクイが30頭以上確認され、北東部海岸でのマングローブ保護のシンボルとされている。
ボチカリオグループ財団の科学保全管理者で生物学者のマリオン・シルヴァ氏は、「アリクイ保護への取り組みは、生物の多様性保護のための科学的知識を促進する取り組み拡大の重要性と、このような種の保護や保全に専念できるような安全で広範な地域を確保するための環境保護地域拡大の必要性を示している」と強調している。
このアリクイは体長約30センチ、体重は最大で400グラム。1日の大半を木の上で過ごし、夜間に単独で行動するため、生態はほとんど知られておらず、国際自然保護連合の分類でも「データ不足」となっている。
中南米でのタマンドゥアイの生態に関する理解は新研究基地の設立で深まっており、アマゾンの熱帯雨林にしかいないと思っていた小型アリクイは7種いることも判明している。
自然保護の専門家ネットワークのメンバーで獣医師のフラヴィア・ミランダ氏によると、遺伝子研究の結果、パルナイバ川デルタのタマンドゥアイはアマゾンでの生育種から200万年間隔離されたものであることが判明。デルタ地帯やカアチンガは何百万年も前に大西洋岸森林帯やアマゾンから分離しており、アリクイ(タマンドゥア)も各地域で独自の進化を遂げたという。
パルナイバ川デルタは約3千平方キロで、80以上の島がある。マングローブ地域は海洋生物の苗床で商業価値のある魚も含む生物種の生息地だが、海水温上昇や酸性化、ブラスチックごみなどの環境問題に略奪的な観光、家畜の存在、風力発電への関心などが重なる、非常に脆弱な地域でもある。
研究者達は地域住民と協力し、マングローブ地域を柵で囲んで生態系の自然な再生を促進。マングローブの再植林は困難な作業だが、既に2ヘクタールを自然植生で回復した。また、コミュニティをベースとする観光開発などの経済的で持続可能な代替案も探しているという。
タマンドゥアイ関連では精液の初採取にも成功。生殖活動の研究を進め、絶滅回避を図る一方、パルナイバ川デルタ海洋レセックス(特別活動保護区)境界部分のカーザ・ヴェーリャ・ド・サッキーニョ・レセックスに創設中の保全区などの自然の生息地への再導入も検討中だ。