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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=31

2024年9月3日

「今晩、言って欲しい。明朝すぐ農場を出るように」
 追いかぶせるように彼は言った。
 強引なやり方だった。そういう方法が時としては効果があることを、サルトリオは長年の経験から知っていた。
 それを、この日本人の若者は対岸の火事からいちはやく学んだらしい。仲々スミに置けない奴だ、という顔を総支配人はした。
「これから、日本人、一生懸命働く。農場は助けて欲しい」
「よし、よし」
 サルトリオは真顔になって、深くうなずいた。
 彼は大工あがりだった。〝日露戦争で大国ロシヤに勝った国民〟という一般ブラジル人の対日認識以上に、日本人の手先の器用さにひどく関心を惹...

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