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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=33

2024年9月5日

 翌朝、運平は三家族を荷物を乗せた馬車と共に駅へ送って行った。
 上井の妻のヒロはまだ十九才だった。ブラジル移民資格を得るため慌しく挙式したばかりの、まだあどけない娘だった。彼女は泣きはらして真っ赤な目をしていた。長屋の人口で、他の女房たちとの別れを辛がってひどく泣いた。まだ気心も知れぬ夫と、従兄の西の三人だけになって、これから遠いアルゼンチンへ流れて行く女を、可哀想だと彼は思った。しかし、移民の最後の砦となったグアタパラを守るための止むを得ぬ犠牲だった。
 運平は無表情にステーションに立っていた。やがて汽車が来て、三家族を乗せた列車はホームを離れた。最後尾の客...

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