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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=35

2024年9月7日

 彼は有利な賃仕事を探してくる一方、草とりはやかましく言って見廻った。除草期は監督もほとんど不要で、時々馬で廻るくらいなのに、運平に率いられた日本人たちは実に丁寧に草をとった。それは、小さな狭い田畑にしがみついて生きて来た、日本農民の体質だった。移民のほとんどは他の職業出身だが、日本人のだれもが百姓とは一本一本草を抜き、米の一粒をもムダにしてはいけないものだ、と思い込んでいたのだ。だから、運平が見廻って樹の下を覗き込んで、まだ残っている雑草を指摘しても、自分が手を抜いたと首をすくめて仕事をやり直した。
 そんなことは粗大な原野に育ったブラジル人には考えられなかった...

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