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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=36

2024年9月10日

 ……車から降りて独りになった運平は、まだボンヤリしていた。すでに馬に乗っているのだが、習慣的に手綱を握っているだけである。馬も、どうしていいか分らないらしく、勝手に歩いたり立ち停ったりしている。
 日本人が気に入ってもっと移民が欲しいらしいことは分る。だが、そのことと、二十二才の若造の自分がドカンと副支配人にされるという点とがどうもうまく結びつかないのだった。
 明治の日本に育った彼の感覚からいうと、そんな場合せいぜい自分を監督に引き上げて恩を売ったり、政府の係官や移民会社の幹部に一杯飲ませて接待したりするのが考えられる策略だろう。現に、日本の移民会社は地方の...

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