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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=42

2024年9月20日

 口惜しそうにわめく声があった。
「そうだ。確かに、騙されたのだ」
 と彼はうなずいた。
 政治家や殖民会社や新聞記者たちの「夢」に、そして自分自身の「夢」に騙されたのだと思った。
「しかし、頑張るしかない。へこたれても、ヤケになっても、誰も助けに来てはくれんのだ。それも此処で、だ。サンパウロに行っても大したことはない。余計に稼ぐようだが、家賃や食料で結局は出てしまう。それを、おれは見て来た。日本へ帰れる日まで、何とか此処で頑張るんだ」
 暗いランプの下で背を屈めてノリを舐めていた周平の惨めな姿が、脳裡にこびりついて離れなかった。一番参っているのは運平自身...

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