先住民居住地問題=最高裁の調停で合意成立=他の係争への適用も含め

【既報関連】最高裁で開催されていた先住民居住地の境界設定に関する調停公聴会で25日、マット・グロッソ・ド・スル州のニャンデ・ル・マランガトゥ居住地の境界設定に関する合意が成立。1・46億レの補償金を受け取る代わり、農園主や農業生産者は15日以内に居住地を離れることを約束したと同日付G1サイトなど(1)(2)が報じた。
同居住地はパラグアイと国境を接するマット・グロッソ・ド・スル州アントニオ・ジョアン市にあり、9317・216ヘクタール(ha)に及ぶ土地を巡る係争や抗争は何年も続いていた。
抗争の一例は12日と18日に起きたグアラニ・カイオワ族と軍警の衝突で、12日には先住民青年少なくとも2人が軍警からの銃弾を受けて負傷。18日には先住民青年1人が頭部に被弾して死亡し、複数の先住民青年が負傷した(13日付G1サイトなど(3)(4)(5)(6)(7)(8)参照)。これらの事件は先住民族や先住民族を擁護する諸団体の怒りを引き起こし、ソニア・グアラジャジャ先住民族相が先住民居住地制定を迅速に行うよう求める事態も招いた(19日付アジェンシア・ブラジル(9)参照)。
州保安局はこれらの衝突が生じたバラ農園やその周辺地域には、裁判所の命令で治安維持のための軍警が派遣されていると説明。軍警は、先住民達が農園への侵入や占拠を試みたために抗争が起きたと説明している。
だが、全国司教会議(CNBB)所属組織の先住民族宣教師協議会(Cimi)は、同先住民居住地で活動している公安部隊は、私的利益を守るための民間警備隊として動いており、司法命令の範囲を超えた脅迫や暴行事件などまで引き起こしていると指摘していた(18日付アジェンシア・ブラジル(10)参照)。
ニャンデ・ル・マランガトゥ先住民居住地は農園主らとの間で土地を巡る争いが起きている場所の一つに過ぎない。だが、今回の合意成立は、現行憲法制定時に先住民が住んでいたか否かで居住地認定を制限するマルコ・テンポラル法適用も含めた、先住民族の土地を巡る争いや居住地制定問題に道筋をつけるものとなる。
調停公聴会はジルマル・メンデス最高裁判事が招集し、地主や先住民指導者、国立先住民族保護財団(Funai)や連邦総弁護庁(AGU)、先住民族省のメンバー、マット・グロッソ・ド・スル州政府関係者らが出席。
公聴会では、Funaiが2005年に出した農園の評価額をインフレや経済基本金利(Selic)で調整した2780万レを地主に払うことや裸地への補償金は1・01億レとすること、マット・グロッソ・ド・スル州が裁判上の供託金として1600万レを国に納めること、供託金の分も含めた補償金を国が所有者らに支払うことなどが決まった。
また、この合意には、先住民居住地に関連して司法機関で係争中の全ての訴訟の消滅も規定されており、その他の訴訟は結審を待たずに手続きを終了する。
また、先住民族側の要請で、先住民族の慣習に従った宗教的・文化的儀式を、18日にネリ・グアラニ・カイオワ氏が死亡したバラ農園で行うことも合意に盛り込まれた。この儀式は28日6~17時に行われ、先住民族約300人が参加する。儀式にはFunaiと国家治安部隊も同伴する。