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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=53

2024年10月5日

 線路に添って前と後の視界が利くだけで、細長い帯がすっぽりと原生林の中に埋っているのだった。行手に小さな橋があった。下に川が流れている。
「おお」
 と、叫んで、彼は土手を降りた。水草を掻き分けてゴクゴクと水を飲んだ。それから顔を洗った。
 同じサンパウロ州でもこのノロエステ鉄道線は未開だった。
 バウルーを起点として鉄道が延びている。開拓者や商人たちがかなり這入りはじめている筈だが、どこに入ってしまったのか
しむ心人影もない。森が広過ぎるのだ。
 運平はサンパウロ市から戻った足で、すぐこのノロエステ線に土地選びに来た。思い立ったらすぐ実行しないと気が済...

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