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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=59

2024年10月15日

 しかし、四辺には開拓の痕跡は何一つ残っていなかった。何の為にこんな処に人が住んだのか、崩れかけた小屋は何も語ろうとしない。静かで少し不気味な感じを漂わせながら、小屋はひっそりと存在していた。
 人々は小屋を後にして更に進んだ。
 七キロはども進んだろうか。時計は五時を指していた。
 「オーイ、今日はこの辺で泊るぞ」運平は先頭に向って叫んだ。こはヤシが多いためか木がまばらになっていて、どうやら夜営できそうな場所であった。枝に三㍍四方の天幕を三つ吊して夜露を防ぎ、地にはカンバスを敷いた。夜に備えて薪を集める者飯を炊くもの、山刀をヤスリで研ぐ者……賑やかに大声で話...

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