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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=64

2024年10月23日

 或る日の早朝……ドラード河が異様な唸りを発した。
 ウォーン、ウォーンという不気味な音響だった。
〝河が鳴く?″
人々は幻聴かと思って不安そうに顔を見合わしたが、確かに河が鳴っていた。誰もが聞いている。
 何人かの者が恐るおそる河に近ずいて、覗き込み、
「ウワァー!」
 と叫んだ。
「魚だ!魚だぞ」
 河が魚の大集団で真黒に盛り上っていた。人々はフルイや空袋などあり合わせのものを持って走りだした。服を着たまま河に飛び込んで――というより魚を押しのけて河に入りーー腰や胸まで漬かりながら、手当り次第に魚をすくって岸へ放り上げた。コイに似た、クリンバタと...

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