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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=69

2024年10月30日

 三方が原の松林を見て育ち、グァタパラの整然たるコーヒー園を見馴れた彼には、熱帯の原生林は乱雑で奇怪な印象を受けるのだった。クネクネとした葛を悪趣味な衣裳のように身にまとい、ヒトをよせつけたがらない不気味な目がその奥の探い処で光っているようだった。
「ここはおれたちの土地だ」
 森に挑戦するように運平は宣言して湿った革の上を大股に歩きだした。見回わらなければならない病人があと三人いる。
……彼が歩む先には地獄が口をあけて待っていた。
……二日後、十二月二十九日の夜に文野の妻は死んだ。翌日、入植者たちが集まって野辺送りを済ませた。ありあわせの板で棺を作り枯木の...

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