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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=72

2024年11月2日

 「どうだ」
 「あんた、そんなことをして……」と妻はオロオロしたが少年は、
 「もっと重くしてえ」と言った。
 今度は柳行李も乗せた。
 「少しはぬくいか?」
 「うん」
 布団や木箱や行李の山の下で少年の声がした。少年の体の震えにつれて木箱や行李が揺れている。
 ……一時間ほどして再び小屋を覗くと、今度は少年は暑がっていた。天井がグルグル廻る、と訴える。茄ったような赤い顔をしてしきりに布団を跳ね除けようとしていた。額に手を当てると、燃えるように暑い。ひどい熱だった。確実に四十度は越しているだろう。
 〈これがマラリヤか〉
 と運平はその熱におど...

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