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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=73

2024年11月5日

 最も近い開業医の在所はバウルーだった。往診というには遠すぎる。数日がかりの旅行だった。札束を積めば来てくれるかもしれないが、札束どころかたった二百レースの香典にも事欠く人々の集団だった。一時間ほどで少年の熱はウソのようになくなった。どうだと訊ねると気分はいいと答えるが流石にぐったりして身動きしなかった。
 測量図が完成して届いていたので、翌日は家長たちに集ってもらって地区割りをした。出身県同志で幾つものコンパを作って地積を分割するのである。いま人々が集って米を作っているドラード河畔から順に番号をつけて十八のブロックに分けてあった。番号が若いほど河に近い低地で、だ...

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