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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=77

2024年11月9日

 ドラード河をはさんだ平地の草原の南側に、森がなだらかな斜面で盛り上っている。草原と森の接点に径がほんの一部ここからも見えた。
 その径を通り馴れた運平には、寒苦に身を縮めた弟が今どの辺を荷馬車に揺られているか分るのだった。あの第三の廃屋を過ぎて、木の根を敷きつめたような上り坂の難所を通っているにちがいない。馬のあえぐ息や、馬をはげます畑中の芦、木の枝が荷馬車をこすって跳ね返るざわめきなどが聞えそうだった。
 やや南に寄った中央に真夏の太陽がギラギラと輝いていた。その暑さに圧倒されたように昼さがりの森は静かだった。日蔭でじっとしていれば涼しいが、戸外でちょっとで...

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