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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=82

2024年11月19日

 ほとんど全員が病気にかかっていた。運平とイサノの元気なのが不思議なくらいだった。集まった人は「三日熱」の発熱しない日の人たちだった。毎日熱が出る人もいる。
 熱はさほどでもないのに貧血して目に見えて衰弱していく者もいた。二重感染、三重感染で複雑な病状を示しており、肺炎や肝臓障害も併発して戸田も手のつけようがない、と蒼い顔をしていた。
 墓穴を掘り、棺を埋め人々は頭を下げた。線香の細い煙が生命にあふれた夏草の上を流れていった。
 運平はうつむいて新しい墓標の前を離れた。死んだウキと同じ年の夫の卯平が墓標に手をかけて佇んでいる姿をこれ以上見ているのが辛かったのだ...

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