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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=91

2024年12月3日

 運平は深い溜息をついた。
 「バウルーに行って買って来る。……グチを言うようだが、わしも悪かったが一言いって欲しかった。売るときは安く、買うときは高いのだから」
 「平野さんが苦労しているのを見たら、金のことは言えんかったのです。それで、ついキニーネに手を付けまして」
 「とにかく、買ってくる。どのくらい要るだろうか?」
 「分かりません。差し当って、この大ビンに一杯は要ると思います」
 運平のバウルー事務所は四つ角のしもた屋である。その道に面して「ノロエステ薬局」があった。
 彼は大ビンに一杯のキニーネを詰めて貰った。代価は高かった。運平がかき集めた...

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