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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=92

2024年12月4日

 荒っぽい利益の追求をしながらも 、信用した相手には細かい詮索をしない新開地の商人らしい気っぶだった。
 その代わり原価の何倍なのか見当もつかない薬価にちがいなかった。
 事務所を弟と畑中に頼んで、彼 はビンをかかえて開拓地に戻った。森は美しかった。樹木の温気が激しく彼を包んだ。黄金色の昆虫が枝にとまっている。紫の強烈な色彩を木の間にきらめかしてモルフォ蝶が飛んだ。しかし、彼は地獄へ向かって馬を進めているのだった。
 森が尽きて草原の向こうに開拓地が望見されてた遠目には平和な風景だった。そして、そうでなくてはならないのだ。そのつもりで彼はここを拓いたのだった。...

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