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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=93

2024年12月5日

 畑中が言った。
 「わしは行かん。おろしてくれ」
 「駄目です」
 「行かんぞ。わしだけ行かれぬ」
 大声をだされて畑中たちは仕方なく彼を小屋へ連れ戻した。
 「平野さん、キニーネを飲んでください」
 戸田が棚の小ビンから白い丸薬をだした。
 「ピンガをくれ」
 「…」
「早くくれ」
 イサノが仕方なく酒をとった。それをグッと飲んで、
 「おい、どうしたんだ。皆、不景気な顔をして。一緒に飲んでくれ。畑中飲めよ、グァタパラで毎晩のんだように、楽しく飲んでくれ」
 運平は二杯目のコップを口に運んだ。手が震え始めていた。カチカチと歯がアルミに当っ...

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